「苦しくて死んじゃうくらいなら逃げた方がいいに決まってんだろ」

10年くらい前に、僕の実家近くにあるスナックに行きました。

10人座ればいっぱいになっちゃうような小さい店です。
カラオケが歌えて、常連さんがボトルを入れて1週間に1回くらい通うような、そんな地元客向けのスナックです。

知らない店に、一人で初めて入るのは勇気がいります。「エイヤ!」と入ってみたら、まだ早い時間だったみたいでお客さんは一人もいませんでした。
30歳くらいの女性が一人で経営している店で、少し話したらとても良い感じでした。
こういうタイプの店は「明るさ&元気全開!」みたいな女性が多いのですが、その女性は少し陰があって、なんだか少し悲しそうに笑うのが気になる感じの人でした。
常連さんも「歌うの大好き!」「話すの大好き!」みたいなタイプは少ないようで、全体的に落ち着いた感じの店でした。

実家に帰ったときにタマに寄るようになりました。
実家に帰るのは毎年2回くらいで家族と一緒のため、毎度その店に通うわけにもいかず、2年に1度くらい、今までに3回行きました。

3年くらい前に、そのスナックの前を通ったら、店のカンバンが無くなっていました。
(あぁ、つぶれちゃったんだな・・)と、残念に思っていました。


先週、両親から頼まれごとがあって、2日ほど実家に帰っていました。

そして、一昨日、そのスナックの前を通ったら違う店の名前で営業していました。
(前の店のことが、わかるかな)と思い、入ってみました。

そしたら、前の店の女性がいました。
前の店は一回閉めて、再度開店したのだそうです。
いろいろとあった感じなのですが、その話が出なかったので、差し障りのない近況をお互いに話しました。

常連さんたちが集まり始めて、店がニギヤカになりました。
僕は飲みながら、隣に座った陽気なジイさんと、なぜか「カンボジア」の話で盛り上がっていました。(^^;)
常連さんたちは明日も仕事なので帰り始め、また客は僕1人になって、少し酔った店の女性と2人で話し始めました。

「オレ、実は病んじゃって会社辞めちゃったの」とぶっちゃけました。
「奥さんも子供もいるのに、会社辞めてこんなところで飲んでちゃダメじゃない!」と初めは笑われましたが、次第に真剣トークになりました。

僕の話を聞き終えると、彼女も「実はネ、私も病んじゃってたんだ」と話をし始めました。

お金のこと、子供のこと、男のこと、いろいろあったようでした。
逃げたかったけど逃げられなくて、どうにもならなかったそうです。

そんなとき、女友達がこう言ってくれたそうです。

「苦しくて死んじゃうくらいなら逃げた方がいいに決まってんだろ」
「アンタが一番大事なのは家族だろ。このままじゃ一番大事なものまで失っちゃうよ

この言葉で、今までのしがらみを全部捨てて、実家に子供を連れて帰ったそうです。

そして、元気になって帰ってきて、またこの地でやり直そうと決めたそうです。

なんか、ドラマの話みたいで感動して2人で泣いちゃいました。(その後は別の話題で大笑いしましたけど)

「苦しくて死んじゃうくらいなら逃げた方がいい」

本当に心からそう思います。

逃げるしか道がないなら、逃げちゃえばいい。
逃げ道だって「道」なんだから。

コメント

  1. さいら より:

    いい話ありがとう。
    お店の女性は、いい女友達持っていてよかったですね。

    • 正吉 より:

      さいらさん、コメントありがとうございます。
      背中を突き飛ばされなかったら気づかなかった、危なかった、と言っていました。
      ちゃんと見てくれている友達がいるっていいですよね。

  2. 山中 一人 より:

    >逃げるしか道がないなら、逃げちゃえばいい。
    逃げ道だって「道」なんだから。

    おおいに賛同致します。

    でも、日本人では我々のような考え方は、少数派なんですよね。
    だからこその先進国トップの自殺大国なのですからね。

    まぁ、あの世は究極の逃げ道ではありますけど、極端なんですよねー。

    • 正吉 より:

      山中 一人さん、コメントありがとうございます。
      極端なのは、日本人の特性なのか、それとも日本のあり方が問題なのか?
      僕は後者のような気がしています。やり直しを許容する社会に変えていかないといけませんね。

  3. MUDMAN より:

    逃げちゃいました^^;)
    正吉さんにたくさん背中押してもらいました
    >逃げ道だって「道」名言です。

    • 正吉 より:

      MUDMANさん、コメントありがとうございます。
      僕なんかで良ければドンドン押しますよ、背中。(^^;)
      もうすぐですね。

  4. 私のかつての先輩同僚はこないだ自殺しましたが、逃げられなかったんですかね。
    独り者なので余計に逃げやすいと思うんですが。

    僕も何かあったら逃げることにしてます、それで人生なんとかなってますからね。

    • 正吉 より:

      招き猫の右手さん、コメントありがとうございます。
      逃げられるタイミングを失っちゃうと、次第に追い詰められちゃうのかもしれません。
      そのタイミングが自分ではつかめない人もいるのかもしれないし、「逃げちゃダメ」と洗脳されているのかもしれませんね。
      「逃げても何とかなる」っていう生き証明になれればいいな、と思ってます。

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